光のもとでⅠ
「君は、たぶん線維筋痛症という病気なんだ。俺はこの手の分野は専門外でね。相馬(そうま)の受け売りなんだが――」
 と、今ある私の体の状態を少しずつ話してくれた。
「通常、痛みを感じれば脳が痛みに対してブレーキをかける。それでバランスを保って痛みを緩和するんだが、君の場合は痛みだけが加速して、ブレーキが壊れていてきかない。だから、痛みだけがどんどん加速して膨れ上がる。それがこの病気の特徴だな。痛みが続けばメンタルにも影響を与えるし、そうすれば必然的に自律神経も乱れる。今の君の状態は正にそれだ」
「……それは治る?」
「繊維筋痛症に劇的に効く薬はない。そして、外科処置でどうにかなるものでもない。それから、自律神経失調症においては君も知っているとおり。基本は規則正しい生活とバランスの取れた食生活、ほか自律神経訓練法くらいしかバランスを整える方法はない。……だが、そんなことはもう実践済みだと栞から聞いている」
「……治らないの?」
「それをどうにかできる医者が来月帰国する。相馬一樹(そうまかずき)ヤツが帰ってくるまでは、俺が責任持って痛みには対処する」
 そんなのどうでも良かった……。
 気持ちは奈落の底だ。
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