光のもとでⅠ
 蒼兄や唯兄とも思ったけど、まだ家族には知らせたくない。
 きっと、神崎先生はさっきの触診と検査での数値で病名を特定したのだろう。
 だとすれば、まだ家族には連絡は行っていないはず。
「……神崎先生」
 今はこの人以外誰も頼れない。
 先生はすぐに姿を現した。
「痛みじゃなさそうだな」
「その病気のことを知りたいです。先生は専門家ではないのでしょう? なら、ネットで拾える情報でもいいです。なんでもいいから、知りたい……」
「……ここにネットで調べたもののコピーがある。読むか?」
 紙の束を見せられ、コクリと頷いた。
「泣いたり感情的になったり――かと思えばものすごく冷静に現実を見る」
「……すみません」
「謝らなくていい。どんな状況でも現況を知ろうとすることは悪いことじゃない。むしろ、建設的だ」
 私はそんなふうに考えて動いているわけではないし、向き合うために資料を読むわけでもない。
 ただ、もうどうやっても這い上がれないところまで自分を突き落とすために読むのだ。
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