光のもとでⅠ
「相馬からはトリガーポイントブロックという治療をするように指示されている」
「トリガーポイント……?」
 聞いたことのない言葉だった。
「痛みを引き起こす、誘引する場所に局部麻酔より浅い部分に細い針の注射器で少量の麻酔を入れていく」
 局部麻酔という言葉に身体がびくりとした。
「君が怖がってる注射とは別物だ。あんな、神経の中枢に刺すようなものじゃないし、分量ももっと少ない。ただ、場所にして数十箇所に刺すことになる。それもほぼ毎日。君が運ばれてきたときにもひととおり処置はした。今はどうだ?」
 そう言われてみれば、目覚めたときにも不思議に思った。痛みが軽いと……。
「……全然耐えられる痛みです」
「これからは耐えなくていい。知覚神経が覚えている痛みが君の最大の敵だと思ってくれ。これからはその神経に痛みを忘れてもらう。そういう治療だ」
 身体の記憶を消す、ということ?
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