光のもとでⅠ
「洗剤や柔軟剤の香り。それから香水、アイソトニック飲料の香り。栞さんの手作りのスープもだめで、お水しか飲めなくて……」
 ほかには――。
「ハーブティー……。ハーブティーは飲めました」
「なるほどね。一時的なものかもしれないけど、化学物質化敏症っぽい症状だな。人工的な香りが全般的にダメってことだ。じゃ、まずは重湯から試してみるかね」
 と、スツールに腰掛けた。
 この先生はいったいいつまでこの部屋にいるつもりなのだろうか。
 太陽はまだ高い位置にあり、外は先生が言うように三十五度くらいあるのだろう。
 空調管理されている病室からは想像でしかわからない外の世界。
 手をかざし、その手すら通り抜けてくる光に目を細める。
 アスファルトの上はもっと熱いんだろうな……。
「閉めてやろうか?」
 え……?
「カーテン」
「だめっっっ」
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