光のもとでⅠ
「大丈夫みたいです」
「なら、少しずつ口にしろ」
 そこで神崎先生のPHSが鳴った。
「はい、神崎。――あぁ、楓か。――お、助かる。あと、素人が読んでもわかりやすい文献も揃えてもらえないか? 翠葉ちゃんが知りたがってる。――何、悪いことじゃない。頼んだぞ」
 一方的に電話を切るのはこの人の癖だろうか……。
 先生は私に向き直り、
「国内でもいくつか本が出てるらしい。患者向けの本もあるから、それを取り寄せてもらえるように頼んだ」
 ありがたいと思うのに、私は自分を心配してくれる人たちを拒んでいる。
 昨日の今日で急に態度を変えられる自信もなければ、まだ当分は顔を合わせたくないと思ってしまう。
 ……というよりは、何を話したいいのかわからない。
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