光のもとでⅠ
「お、サッパリしたな」
 カートの上に、治療にそぐわないものがひとつ……。
「ウォーカーズのクッキー……」
「あぁ、秋斗からだ。食べられるようならって置いていった」
「ほれ」と無造作に渡され、また涙が出る。
 この涙腺、どうにかしてほしい……。
「……俺、なんかまずいことしたか?」
「いえ、彼女少々情緒不安定なんです」
 藤原さんの答えに、
「なんだ、そんなに親父さんと会うのがプレッシャーなのか?」
 心配そうに訊いてくるバリトンの声に、首を振って否定を伝える。
「それは、司先輩が来てくれるから、大丈夫……」
「じゃ、なんだ?」
 途方に暮れた様子でベッドにギシリと腰掛けた。
「その髪の毛、秋斗くんが関係してるのかしら?」
 藤原さんの言葉に反応して顔を上げると、重力に逆らわず、涙がボロボロと零れた。
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