光のもとでⅠ
 藤原さんがお茶を持ってきてくれると、
「ほら、ゆっくり飲め」
 カップを手に持たされた。
「少しずつ、何回にも分けて飲んでいればしゃっくりは止まる」
 断言されると、本当にそんな気がしてきて、飲むことに集中した。
 昇さんはその間、頭ではなく背中を撫でてくれていた。
「今、五時か……。おい。少し落ち着いたら院内散歩だ」
「神崎医師、三十分以内には戻られてくださいね」
「了解。念のためにタオル持たせて。途中で泣かれたら困るから」
 昇さんの言葉に藤原さんがクローゼットからタオルを出してくれた。
「おら、行くぞ。外の空気吸って、身体中の空気も入れ替えろ」
 車椅子の用意をすると、
「中庭の大きな木が好きなんだろ? 楓から聞いてる」
 楓先生……。
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