光のもとでⅠ
 正直、胃はむかむかしているし食べたい気分でもなかった。
 それでも、きっと食べないよりは食べたほうが身体にはいいのだ。
 わかっていてもできないことがある。知らなくてもやれていることがある。
 そんなことが自分の周りにはきっとたくさん転がっている。
 そのひとつひとつを拾っていかなくてはいけない。
 人の一生は障害物競走みたいだ。
 走るのは自分なのに、周りの人たちがどんなふうに障害物を越えていくのかが気になる。
 ほかの人とは体格も走るペースも障害物も、何もかもが異なるのに。
 なのに私は人と自分を比べたがる。
 隣の芝生は青く見えるとわかっているのに……。
 それでも比べることをやめられない。
 だからつらくなる……。
 自分と闘わなくちゃいけないのに、その自分が雲隠れしている気分だ。
 今、自分がどこに立っているのかがわからない――。
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