光のもとでⅠ
「あのね、昇さんに言われたの」
先輩は本を閉じて顔を上げた。
「言葉で傷つけたくないからって遠ざけている私は、遠ざけた時点ですでに傷つけてるって……」
先輩は何を言うでもなく聞いてくれていた。
「――ノックアウト。その言葉だけでノックアウトだよ。傷つけたくなかったのに、もうすでに傷つけてるなんて……。しかも、一番ひどい傷つけ方だって言われた」
自分の非を認めると、身体にぎゅ、と力が入った。
すると、左手に先輩の手が重ねられた。
その手を見ながら口を開く。
「あのね、人を傷つけたら私が傷つくの。人を傷つけたことに負い目を感じるの。だから、大切な人をみんな遠ざけた。自己防衛をも含めて遠ざけてきた。そしたら、私は傷ついていないのに、遠ざけた時点でみんなを傷つけてた――知らなかった」
「……気づけて良かったんじゃない?」
重ねた手はそのままに、先輩は本を読み始める。
でも、それで良かった。
先輩は本を閉じて顔を上げた。
「言葉で傷つけたくないからって遠ざけている私は、遠ざけた時点ですでに傷つけてるって……」
先輩は何を言うでもなく聞いてくれていた。
「――ノックアウト。その言葉だけでノックアウトだよ。傷つけたくなかったのに、もうすでに傷つけてるなんて……。しかも、一番ひどい傷つけ方だって言われた」
自分の非を認めると、身体にぎゅ、と力が入った。
すると、左手に先輩の手が重ねられた。
その手を見ながら口を開く。
「あのね、人を傷つけたら私が傷つくの。人を傷つけたことに負い目を感じるの。だから、大切な人をみんな遠ざけた。自己防衛をも含めて遠ざけてきた。そしたら、私は傷ついていないのに、遠ざけた時点でみんなを傷つけてた――知らなかった」
「……気づけて良かったんじゃない?」
重ねた手はそのままに、先輩は本を読み始める。
でも、それで良かった。