光のもとでⅠ
 だから、"若槻"には固執しないのね。
「うちは蒼樹も翠葉も変わった名前だから、唯芹が加わったところで全然違和感ないけどな」
 お父さんはカラカラと笑った。
「でも、彼には何か大きな意味があるんだろうね」
 柔らかく、包み込むようにあたたかな笑顔で言われる。
「お父さんって……」
「なんだ?」
「……時々仏様みたいな顔をするよね」
 お父さんは口にカップをつけたまま盛大に吹き出した。
 お布団とお父さんのシャツが多少の被害を被る。
 そんな惨状にふたりして大笑い。
 こんなふうに笑える自分に驚きながら、
「お父さん……今はね、痛みが少ないの。治療のおかげだと思う」
「良かった」
 心底ほっとした顔になる。
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