光のもとでⅠ
「どうしよう……限りなく思考がネガティブ」
 携帯に手を伸ばし、いつもと同じ声を聞く。
 その声に集中しすぎて周りが見えなくなっていた私ばバカだ。
 一通り聞き終わってほっとため息をついた瞬間、
「なぁ、それ……いつも何を聞いてんだ?」
 急な問いかけに息が止まった。
「おうおう、びっくりしてんな。全然気づいてなかったもんな」
 止まった呼吸を再開するのには何かコツでもいるのだろうか。
 そのくらい、どうやったら呼吸ができるのかわからなくて困っていると、昇さんがトントン、と背中を叩いてくれた。
「ほれ、呼吸しろ。吸ったら吐くんだ。吐いたら吸う。その繰り返し」
 最初に、ケホケホ、と少し咽たものの、呼吸は無事再開できた。
「で? 何聞いてたんだ?」
「私の精神安定剤なので秘密です」
 どうしてか、人に話すのは恥ずかしかった。
< 1,973 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop