光のもとでⅠ

　楓先生のオフィスは別棟の三階にあった。
　お医者さんみんなにオフィスがあるのだろうか……。
　不思議に思って尋ねてみると、「ないない」と笑って返された。
「自分は藤宮の人間だからあるようなもので、本当ならこんな部屋なくてもいいんだ。その分病室にすればいいのにね」
　どこか藤宮の一族である自分を厭うような声音が混じっていた。
　通された部屋は大きめのデスクにパソコンモニター。それから、湊先生のおうちにあるみたいな、床から天井までの本棚。
　その本棚は定員オーバーで、おさまりきらない本たちが床に積み重ねられていた。
「あまりきれいな部屋じゃなくてごめんね」
　苦笑する楓先生は恥ずかしそうに頭を掻いていて、なんだか珍しいものを見た気がした。
　簡易ベッドがあったり飲みかけのマグカップがあったり……。
　男の人っぽいお部屋。