光のもとでⅠ
 そんな穏やかな時間は楓先生のPHSの呼び出しで終わりを告げる。
「翠葉ちゃん、午後の治療が始まるって」
「あ、はい」
 手元には時間を知らせるものは何もなく、時間の経過をすっかり忘れていた。
「あ……楓先生お昼休み終わっちゃった!?」
 先生はクスリと笑う。
「今日はもう帰ってもいい時間。夜勤明けなんだ」
 やだ――もしかして、すごく眠いんじゃ……。
「ほら、そんな顔しない」
 楓先生は再び私の正面に座った。
「一緒にお昼を食べられて良かった。家に帰ったらちゃんとまた食べるから。指きり」
 楓先生は指を絡めて指きりげんまんを口にする。
「楓先生、ありがとうございます」
「どういたしまして。また今度ね」
「じゃ、翠葉は私たちと一緒に病室へ戻ろう」
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