光のもとでⅠ
「仲直りの抱擁……かな?」
 蒼兄の声が身体中に伝った。
「じゃ、俺も混ぜてよ」
 と、抱擁に唯兄が加わる。
 雁字搦めで身動きは取れないのだけど、なんだかとてもくすぐったくて幸せな気持ちになった。
「なんだなんだ、微笑ましいじゃないか。真夏にはちょっと暑っ苦しそうだが……」
 そんなお父さんの言葉にお母さんがクスクスと笑った。
 久しぶりに家族がそろった時間は、とても幸せで優しさに満ちた時間だった。

 時計は五時半を指している。
「お母さん」
「何?」
「お風呂に入ったら髪の毛を乾かしてもらえる?」
「いいけど……お風呂に入れるの?」
 クローゼットの荷物を整理していたお母さんが振り返る。
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