光のもとでⅠ
 病室に戻ると、夕飯が届いていた。
 藤原さんは点滴を再開させると、「じゃ、ごゆっくり」と病室を出ていく。
 髪の毛は蒼兄が乾かしてくれるみたいで、ドライヤーは蒼兄が持っていた。
「冷めないうちに食べちゃいなさい」
 お母さんに言われてテーブルにつくと、蒼兄が髪の毛を乾かし始めた。
 いつか家でもこんなことがあったな、と思いだす。
 確か、あのときは唯兄が乾かしてくれたのだ。
 まだそんなに遠い前の出来事じゃないのに、いつ頃だったかは不鮮明。
 月日が気になり携帯を手に取ると、ディスプレイにカレンダーを表示させた。
「あ……」
「どうした?」
 私の異変に気づいた蒼兄に訊かれる。
 私の治療が明日でストップするということは、ツカサのインターハイの日は痛みに耐えている時期じゃないだろうか……。
「なんでもない……」
 そうは答えたものの、胸がざわつく。
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