光のもとでⅠ
「なんでもなくはないだろ?」
 今度は顔色をうかがわず、いつものように指摘された。
「うん……。四日がツカサのインターハイの日」
「まさか行きたいとか言わないよな……」
「さすがにそれは考えてないよ」
 ただ、痛みがどんなふうに出てくるのかがわからない時期。
 私は自分で携帯が使える場所まで行くことができるだろうか。
「あのね、ツカサからの電話を待つことになっているの。でも、携帯が使える場所はこの棟の一番端だから……。そこまで行けるのかなって、少し不安になっただけ」
「……あら、そんなことなら私がそこまで連れていってあげるわよ?」
 え……?
「なんでもひとりでやろうとしないで人を頼ればいいのよ」
 お母さんに、「とても簡単なことよ」と言われた気がした。
 連れていってもらうのは簡単だろう。
 でも、違うのだ……。
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