光のもとでⅠ
「それから」と、私の隣に腰掛けると、
「私が使っている部屋、この隣なの」
 その言葉は私に、というよりは、秋斗さんへ向けて発したような気がした。
「だから、秋斗くんも安心でしょう?」
 藤原さんは秋斗さんへ向き直る。
「……そうでしたか」
「えぇ。さ、御園生さんは寝る前の薬を飲みましょう」
 藤原さんはいつものようにポケットからピルケースを出すと、
「あら、お水忘れちゃったわ。秋斗くん、持ってきてくれるかしら?」
 言葉だけを見れば尋ねているように思える。
 でも、明らかに命令を匂わす声音だった。
 秋斗さんは笑顔を崩すことなく、「えぇ、喜んで」と病室を出ていく。
 病室を出ていく秋斗さんを見送ると、「大丈夫よ」と肩を抱き寄せられた。
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