光のもとでⅠ
「ごめ、なさい……」
「……俺が聞きたいのはそんな言葉じゃないけどね」
「私の患者をいじめないでくれるかしら?」
 藤原さんが冗談ぽく口にすると、
「いいでしょう。今日はあなたに任せるとしましょう。……また、明日来るからね」
 そう言い残して、秋斗さんは部屋を出ていった。

「さ、今度こそ薬を飲みましょう」
 渡された薬とお水を戸惑うままに飲んだら、ひとつのカプセルが喉に引っかかって苦しかった。
「そんなに慌てなくても大丈夫よ。私が使っている部屋が隣というのは本当のことなの。もしそれでも不安なら、この部屋で一緒に寝るから安心なさい」
 そう言って立ち上がると、壁に付いていたハンドルを引っ張り出す。
 塗り壁のようなものがにゅっと出てきて、全部を引き出すと、壁に見えていた面がゆっくりと傾斜しだし、ベッドが本来あるべき形になった。
 それは普通のベッドと遜色ないベッドだった。
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