光のもとでⅠ
「でも、心配かけてることには変わりないよね」
 申し訳ないなぁ……。
 この身体、どうにかならないのかな。
「よう、翠葉ちゃん。目、覚ましたって?」
「あ、昇さん……」
「顔色も良くなったな。検査が終わったらもとの部屋に戻るから」
「はい」
「嬉しそうだな?」
「だって、ここは病院の中でとくに嫌いな場所だもの……。まだ九階のほうがいいです」
「そうか……」
 昇さんの声音が一瞬変わったように思えた。
「昇さん……?」
「なんだ?」
「……なんでもないです。でも、どうしてここには機材がないんですか? 私、不整脈で倒れたんですよね? それなら心電図くらいつけられていそうなものなのに」
「あぁ、さっきいまでついてたんだ。でも、もう大丈夫だから外したんだよ」
 曖昧に笑って、「俺、便所」とカーテンから出ていった。
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