光のもとでⅠ
「とりあえず、脳波と頭のMRI。異常がなければ徐々に思い出すのを待てばいいわ」
「治療はしなくても大丈夫なんですか? お薬が増えたりしませんか?」
「治療はない。薬も増えない。ただ、思い出すのを待つだけ」
「……あの、もうひとつ質問なんですけど、その抜け落ちている記憶のせいで私が困ることってありますか? 急に家の場所がわからなくなったりとか……若年性アルツハイマーとかだったらやだな……」
 この身体に、そんな付加が加わったら――。
 そう考えるだけでも恐ろしかった。
 記憶がないということは、本当に怖いことなのかもしれない、と今初めて知った。
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