光のもとでⅠ
「そっか……この病院は唯兄にとってはあまりいい思い出がある場所じゃないものね……」
 問題をすり替えられたことに気づく間もなく、鏡はお母さんにしまわれていた。
「じゃ、司くんに入ってもらうわね」
 確認をされて、コクリと頷いた。
 お母さんと入れ替わりで男の子が入ってくる。
 男の子、というよりは男子。高校の制服をきっちりと着ている人。
「翠……」
 電話で呼んでいたように私を呼んだ。
「あなたが、藤宮司……さん?」
 作り物みたいにきれいな顔が一瞬強張る。
 でも、すぐに能面みたいな無表情に戻り、「ここいい?」とスツールを指差した。
「どうぞ……」
 格好良くてきれいな人……。
 メガネがすごく似合っていて、メガネがより神経質そうに見せる。
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