光のもとでⅠ
「……ワタシ、バリバリの姫カット希望……絶対に似合うよ」
 鏡の中に映りこんだ小宮さんが口にする。
「タマキ、おまえの意見は訊いてない」
 宮川さんがピシャリと締め出す。
「どうしたい?」
「……どうしましょう」
「絶対に似合うよっ」
 小声で小宮さんが主張するのがおかしくて、
「じゃ、姫カットにしようかな」
「……そうだなぁ。似合うけど……じゃ、こうしない? 姫カットで切るけども、前髪は左に流せる程度の長さを残してパッツンにはしない。サイドは今より少し短めで顎のラインからシャギーを入れる。後ろは傷んでる部分を切ると――二十センチから二十五センチ短くなるから、腰よりもやや上あたり。どうだろう?」
 次々に提案されたことを頭の中で想像する。
 でも、最後にはいつもこう言うのだ。
「宮川さんにお任せします」と。
「わかった。切りながらどうしたいかその都度訊くよ」
 鏡越しに微笑まれ、安心して身を任す。
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