光のもとでⅠ
「何か着々と進んでいるわね」
「そうだな、何かがな……」
 私はそんなふたりをよそに、アルバムに視線を戻した。
「……写真を見せられると、本当に知り合いだったんだなぁ……って思うね?」
 次のページをめくると、佐野くんが気まずそうに口を開いた。
「なぁ、マジで記憶なくなっちゃったのか?」
「んー……ここで冗談でした、とか言えたらいいのだけど、どうも本当らしいのよね。自分でもまだ信じられなくて」
「バカね、佐野。翠葉がこんな性質の悪い冗談を言えるわけがないでしょ」
「ま、それはそうなんだけどさ……」
 佐野くんはなんとも言えない顔をしていた。
 再度アルバムに視線を戻す。
 抽選会をしているところや衣装の準備をしているところ。
 桜香苑手前の芝生広場にガーデンテーブルが運ばれるところ。
 そして、図書棟から出てきた私をエスコートしてくれていたのはツカサだった。
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