光のもとでⅠ
「わぁ……王子様っ」
 私の一言にふたりが笑う。
「確かに、マントつきだしな」
 と、アルバムを覗き込んだ蒼兄も笑う。
「翠葉もピンクのドレス似合ってるわね」
 お母さんに言われてなんて答えようか迷った。
「このドレスだけはなんとなく覚えている気がするの。それから、ピアノを弾いた気はするけれど、何を弾いたのかまでは思い出せなくて……。でも、茜先輩と星に願いをとエーデルワイスを協演したのは覚えてる」
「……藤宮司に関する記憶がないのなら、それで当然だわ。このときはずっと藤宮司が翠葉についていたのよ」
 桃華さんの言葉を裏付けるように、アルバムがそれらを物語っていた。
「翠葉も私と海斗も、このときに生徒会メンバーに就任したのよ」
 ステージの上に、ずら、と生徒会メンバーが並んでいる写真を見て言われる。
 生徒会メンバーの顔はみんな覚えていたし、名前だってきちんと覚えている。
 なのに、どうしてツカサのことだけ忘れちゃったのかな……。
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