光のもとでⅠ
 ぐっすり眠って起きた頃には三時を回っていた。
 窓に目をやれば、まだまだ外は暑そうで――。
「あら、起きた?」
 お母さんがお花をいけた花瓶を手に戻ってきた。
「これね、さっき桃華ちゃんと選んだのよ?」
 お花は向日葵オンリーだった。
 最近は品種改良を重ね、小ぶりなひまわりが出回っている。
 それがブーケに入っていることも珍しくはない。
「ひまわりって見てるだけでも元気になるね。色が明るくて姿勢がいいからかな」
「そうね。時々下を向いている向日葵を見るけれど、ついつい上を向けっ! って言いたくなるわよね」
「お母さんは口にしていそう」
 外は暑いのだろうけれど、空調がきいた病室には軽快な笑い声が響いていた。
 人がいるのはいい……。
 病室にひとりだと、ただただ時間が過ぎていくのを感じるだけで、体感時間が狂ったんじゃないかと思うほどに時間が過ぎるのが遅く感じる。
 そして、終いにはひとり言が増えるのだ。
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