光のもとでⅠ
 その人とどんな会話をしてきて、どんな関係を築いてきたのかがわからないのは、"思い出"というとても大切な宝物を盗まれてしまった気がする。
 どうしてこんなことになってるのかな……。
 人の話を聞いても記憶が戻ることはなく、ただ「そうなんだ」と思うだけ。
 だからかな……。
 携帯に残されたメールのやりとりを見るのが怖かった。
 見ればどんな関係だったのかはわかるかもしれない。
 でも、どうして私がこの人たちを忘れなくちゃいけなかったのか……。
「メールを見たら、それがわかったりするのかな」
 もし、その理由がわかったとして、私は記憶を取り戻せるのかな。
 不安が常に付きまとい、どうしてもメールの受信ファイルや送信ファイルを開くことができないでいた。
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