光のもとでⅠ
 フォークでブロッコリーを刺して口へ運ぶと、
「がんばってるね」
 コクリと頷き、咀嚼し終えて飲み込んでから、
「がんばらなくちゃだめだから」
「この場合、がんばれともがんばるなとも言えないのがつらいよ」
 唯兄は戸籍謄本をショルダーバッグにしまうと、それをベッドの足元に置き、
「俺はさ、あんまりがんばりすぎて神経を張り詰めているリィも見たくないし、すべてを放棄しているリィも見たくはないんだよね。もっと普通でいられたらいいのにね」
 "普通"か――。
「そうだね……。私も"普通"がいいな。……でも、その"普通"がどこにあって、どんなものなのかが私にはわからないの」
 "普通"からかけ離れているのが"自分"だった。
「少しずつ探そうよ。リィの"普通"をさ。そういうのは手伝うよ」
 そういうと、額を軽くはじかれた。
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