光のもとでⅠ
 記憶を取り戻したいと思うのに、どうしてか怖いと感じるこの気持ちはなんなのだろう。
 記憶がないことを気持ち悪いと思うのに、記憶が戻ることに不安や戸惑いを感じるこの感覚はどこからくるのだろう。
 藤原さんが、「ストレスから記憶を無くした恐れがある」と言っていた。
 私にとって、記憶を無くすほどのストレスとはどんなものだったのだろうか。
「本当にストレスで記憶を無くしたのかな」
 そういうのは自己防衛というのだろう。
 私は自己防衛で記憶を無くした――だとしたら、どうしてその対象がツカサであり、藤宮秋斗さん、蔵元森さんだったのだろう。
 わからない――。
 どうしてこの三人だったのかな……。
 ツカサは一学年上の先輩で、藤宮秋斗さんはその従兄。
 蔵元森さんは藤宮秋斗さんの秘書。
 ツカサと藤宮秋斗さん仲がいいのは別におかしなことではないだろう。
 でも、蔵元森さんは部下にあたる人だし、私にはなんのつながりもないように思う。
 それとも、藤宮秋斗さんに関わる人だから忘れちゃったのかな。
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