光のもとでⅠ
「蒼兄も……? 蒼兄もそうだったの?」
「……訊かれるだろうなぁ、とは思った。そうだなぁ……。優勝したらさ、なんか気が抜けたんだ。それまで張り詰めていたからっていうのもあるんだけど、次の目標が欲しくなった。でも、それが陸上じゃなくてもいいかなって思っちゃったんだ」
そうなのね……。
「ねぇ、訊いてもいいかしら? お兄さんもインターハイ出場経験者なの?」
藤原さんは作業を完全に止めていた。
「そうですよ。一年は入賞どまりでしたけど、二年では優勝してます」
「……御園生さんの感覚が微妙にずれている理由が少しわかったわ」
藤原さんはひとり納得して病室を出ていった。
「さて、食べられるところまではがんばって食べるんだろ?」
「うん」
頭の中ではツカサのことを考えていた。
陸上のようにタイムで順位が決まらないのが弓道。
ツカサのことは覚えていないのに、弓道の知識だけは頭の中にある。
射法八節も知っているけれど、それはいったい誰が教えてくれたものなのか……。
ツカサ、かな……。
ツカサは今頃どうしているだろう。
「……訊かれるだろうなぁ、とは思った。そうだなぁ……。優勝したらさ、なんか気が抜けたんだ。それまで張り詰めていたからっていうのもあるんだけど、次の目標が欲しくなった。でも、それが陸上じゃなくてもいいかなって思っちゃったんだ」
そうなのね……。
「ねぇ、訊いてもいいかしら? お兄さんもインターハイ出場経験者なの?」
藤原さんは作業を完全に止めていた。
「そうですよ。一年は入賞どまりでしたけど、二年では優勝してます」
「……御園生さんの感覚が微妙にずれている理由が少しわかったわ」
藤原さんはひとり納得して病室を出ていった。
「さて、食べられるところまではがんばって食べるんだろ?」
「うん」
頭の中ではツカサのことを考えていた。
陸上のようにタイムで順位が決まらないのが弓道。
ツカサのことは覚えていないのに、弓道の知識だけは頭の中にある。
射法八節も知っているけれど、それはいったい誰が教えてくれたものなのか……。
ツカサ、かな……。
ツカサは今頃どうしているだろう。