光のもとでⅠ

32

 会って話をしていたらわかるものなのかな。
 でも、気づくとツカサの声が聞きたくて携帯を耳に当てている。
 リダイヤルを呼び出してはツカサの番号を見ている。
 たぶん、会いたいんだろうな……。
 でも、今はさすがに無理。
 頭ではわかっているのに、気持ちは会いたいと思っている。
 ツカサに話したら、「物理的に無理」と一言で片付けられてしまいそうだ。
 その言葉を口にするツカサを想像したら笑みがもれた。
「何か面白いことでも考えてたのか?」
「ううん、違うの。ただ、会いたいなと思っていても今は無理でしょう? もし、それを電話で伝えたとしても『物理的に無理』って言われるんだろうなって想像したら、仏頂面のツカサが簡単に想像できて面白くなっちゃっただけ」
 蒼兄はどうしてかびっくりした顔をしたけれど、「それは言えてるな」と表情を緩めた。
「携帯ゾーンまで連れていこうか?」
 訊かれて少し悩む。
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