光のもとでⅠ
 廊下を進みながら、
「あのね、今になってすごくドキドキしてきたんだけど、どうしよう?」
 ちら、と後ろの蒼兄を見ると、クスクスと笑われた。
「本当だ、顔が真っ赤」
 言われるまでもなく、頬が熱を持っていることは自覚していた。
 頬に触れたところでそれが治まるわけでもないのに、頬に触れずにはいられなかった。
「電話って便利だよな。いくら真っ赤でも相手には見えないし」
 蒼兄に言われてはっとする。
「……すごいね? 電話って、すごいね? とても便利なアイテム」
 今さらながらに自分の手におさまる携帯をまじまじと見つめた。
 廊下の端、携帯ゾーンに着くと、
「俺はエレベーターホール前のロビーで飲み物飲んでるから」
 と、その場にひとりにしてくれた。
< 2,214 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop