光のもとでⅠ
「ごめんね……。でも、知りたかったの。自分が誰かを好きになったことがるのかどうかを。本当にそれだけだから……誰を? とは訊かない。だから許してね」
 最後は冗談ぽく話した。
 本当は知りたい。
 誰を好きだったのか――。
『不安、だよな……。一部とはいえ記憶がないのって……』
 佐野くんの声のトーンが下がった。
「佐野くん、大丈夫だよっ。全然大丈夫っ。あのね、栞さんが教えてくれたの。運命を信じてみたら? って」
『運命……?』
「もし記憶を無くしたとしても、本当に好きな相手だったのなら、また出逢って好きになるって」
『……確かに、本当に好きならもう一度好きになるのかもな。……って、俺は御園生を見てそれを確かめたくなってきた』
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