光のもとでⅠ
「楽になりたくないわけじゃないです。でも、そんなに簡単に楽になっちゃだめな気もするの」
 この言葉には心底不思議そうな顔をされた。
「痛みって、なってみないとわからないでしょう? 実際にそれはつらいし発狂したくなることもある。でも、ここから何かを得られるものはないのかなって、最近少し考えるんです」
 昇さんは何も言わずに私を見ていた。
「この痛みで死ぬことがないのなら、なんで私はこの痛みを背負ってるのかな、って……」
 お布団に落としていた視線を昇さんに戻す。
「知ってますか? 神様はね、その人に乗り越えられない試練は与えないんですって」
 少し笑みを添えて訊いてみた。
「キリスト教では有名な話だな」
「はい。私はキリスト教じゃないし、絶対的に神様を信じているわけでもないんですけど――でも、その教えは信じてもいいかな、って思えるんです」
「……それなら、痛みだって甘んじて受ける、か?」
 そうではない……。
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