光のもとでⅠ
「夜の七時。面会時間が終わってからだ」
「そう……その時間なら来れるけど?」
 柏木桜の家庭教師は五時半には終わる。
 場所は学校の図書館を指定してある都合上、タイムロスもない。
 家でシャワーを浴びるくらいの時間も取れるだろう。
「え……来てくれるんですかっ!?」
 さらに力をこめて手を握られる。けれど、その力はとても弱い。
「かまわない」
 ほっとしたのか、翠の表情が緩む。
 そんな翠を見て俺もほっとした。
「……ね、君たち付き合ってんの? なんか事前情報と違うんだけど」
 事前情報――。
 きっと、栞さんから何かしら聞いているのだろう。
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