光のもとでⅠ
「契約した以上、途中で投げ出すつもりはない。でも、二度と頼まれるつもりも契約を更新するつもりもないから」
 夏休みとはいえ、大学敷地内にある図書館には人が大勢いる。
 その人ごみに紛れるのはひどく簡単なことだった。

 部室棟の脇に停めてある自転車に乗り、家路へと急ぐ。
 家の前までくると、ミートソースの匂いがした。
 一緒に出されるのは、もやしとザーサイ、きゅうり、鶏のささみのサラダだろうか。
 最近、母さんがえらくはまっているサラダだ。
 自転車を停めて玄関のドアを開けると、「おかえりなさい」と母さんが顔を出した。
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