光のもとでⅠ
 体調が安定していない今、人に気を回す余裕なんてないだろう。
 いつもなら気づけることでも今回は気づく余裕すらなかった。
 そういうことじゃないのだろうか。
 泣かれるかと思ったけど、それはない、とすぐに思い直す。
 自分が悪かったとき、翠は逃げずに歯を食いしばるからだ。
 こういうときなら泣いてくれてもいいんだけど、と思わなくもない。
 七時まではあと三分――。
「司先輩、屋上に連れていってくれますか?」
「……あと少しで七時だけど?」
「……うん、だから」
「わかった……」
 すぐに車椅子の準備をして部屋を出る。
 ナースセンターの前を通ると藤原さんに声をかけられた。
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