光のもとでⅠ
 六時二十分――。
 そろそろ出るか。
「碧、ちょっと静のところへ行ってくる。どうやらこの時間しか都合がつかないらしくてさ」
「あら、そうなの?」
 寸分も疑わずに言葉を返されるから心苦しさが沸点を超える。
「九時までには帰ると思う」
「ま、車で行くのならお酒は飲めないでしょうし、気をつけてね」
 そんな言葉を添えられて、さらに良心が痛む。
 あぁ、話の内容によっては帰ってきたら早々にカミングアウトしてしまおう。
 そう思って、簡単に用意を済ませ、中身が空のブリーフケースを手に家を出た。

 病院までは渋滞もなく二十分ほどで着いた。
 普段なら三十分はかかるはず。
「無意識にスピード出してたか?」
 ひとり呟きサイドブレーキを引く。
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