光のもとでⅠ
その、白く冷たい手に自分の額をつける。
「翠葉、幸せか……?」
訊かずにはいられなかった。
「私は幸せだよ」
間髪容れずに返事をした娘。
俺はかなり酷な質問をしていると思う。
「こんなふうに治療を受けなくちゃいけなかったり、身体がつらくても、か?」
翠葉は少しの沈黙のあと、
「……この身体じゃなかったら、なんて考えても何があるのかわからないんだよ」
それもそうだ。
味わったことのないものを想像するのは簡単そうで存外難しい。
苺を食べたことのない人間に、苺の味を尋ねたところで、「食べたことがないからわからない」と返ってくるのと同じことだ。
「翠葉、幸せか……?」
訊かずにはいられなかった。
「私は幸せだよ」
間髪容れずに返事をした娘。
俺はかなり酷な質問をしていると思う。
「こんなふうに治療を受けなくちゃいけなかったり、身体がつらくても、か?」
翠葉は少しの沈黙のあと、
「……この身体じゃなかったら、なんて考えても何があるのかわからないんだよ」
それもそうだ。
味わったことのないものを想像するのは簡単そうで存外難しい。
苺を食べたことのない人間に、苺の味を尋ねたところで、「食べたことがないからわからない」と返ってくるのと同じことだ。