光のもとでⅠ
 本人が会うと決めた人間しか面会しないことになっている今、電話をかけて状況を知ったところで、俺が会いにいける人間になれるわけじゃない。
 だいぶ涼しくなった車中にすら文句を言いたくなる始末だ。
 こうしていても仕方ない。
「仕事に行きますか……」

 夕方までかかる予定だった会議を二時には終わらせマンションに戻ってくる。
 仕事前の一服と称してお茶を飲んでいると、
「いったい、何をそんなに荒れてるんです?」
 呆れたように蔵元に訊かれた。
「まぁ、察しはつきますが……。翠葉お嬢様のことでしょう?」
 寸分違わずついてくる。
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