光のもとでⅠ
「……助かる」
「私はここにある資料を片付けたら本社へ戻ります」
 蔵元は三十分ほどで片づけを済ませ、必要な書類を携えて出ていった。
「有能な秘書をつけてくれた父さんに感謝……」
 すると、携帯が鳴る。
 相手は蔵元。
「何? 忘れ物?」
『そのようなものです。今日は昼食を召し上がられていませんよね? キッチンの上の戸棚にレトルトのお粥が入ってるので、それを食べしっかりと薬を飲んでからうな垂れてください。以上です』
 どこまでも面倒見のいい男だ。
 俺は言われたとおりに行動して薬を飲む。
 こんなことくらいで薬をさぼってまた吐血する羽目にはなりたくないし、それこそ情けなく思えるからだ。
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