光のもとでⅠ
「冷徹になれ……」
 そう、自分に言い聞かせる。
 彼女に甘い自分を追い出すんだ。
 今の彼女には冷たいくらいの自分でちょうどいい。
 そこまで考えをまとめてから目を開ける。
 今は確かに夜だが、目に入る何もかもがグレーがかって見えるのは、夜だから、というわけではないのだろう。
 何かフィルターがかかっているような気がする。

 病院へ着き、裏口近くに車を停めた。
 警備員室の人間には軽く会釈をされる。
 九階まで上がり、彼女のいる部屋へ向かおうと思った。けれども何かが気になり、病室がある方とは反対に目を向けると、廊下の突き当たりに彼女がいるのが確認できた。
 ソファに座った彼女はピクリとも動かない。
< 2,354 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop