光のもとでⅠ
「翠葉ちゃん」
 俺の声に、彼女の身体が跳ね上がる。
 恐る恐る――そんな感じでこちらを振り向いた。
「秋、斗、さん……」
 声が震えていた。
「ずっとここにいたの?」
「……はい」
 夏とはいえ、こんなところにずっといたら冷えるじゃないか……。
 冷徹になりきれていない自分に舌打ちをしたい気分だ。
 彼女はというと、ソファの真横に立ち、背もたれに掴まった状態で頭を下げる。
「ひどいことをして、ごめんなさい……」
 ――冷たくなれ。
 償いを求めろ、彼女を責めるんだ――。
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