光のもとでⅠ
「あのっ……」
「何?」
 彼女が慌て出す。
 今度はきちんと目が合った。
「私、九階の病室がいいですっ……」
「九階で受けられる治療ならここでも受けられるよ。この階には手術室だってあるんだ」
「そうじゃなくてっ……」
 差額ベッド代や特別室使用料のことかな。
「あぁ、個室の金額とか気にしなくていいよ」
 そんな話は取り付けていないが、彼女はじーさんのお気に入りのようだし、問題はないだろう。
 どうやっても覆ることはないと諦めたのか、俺を見ていた顔が下を向く。
「この部屋ならネットも使えるし携帯も電波が入る。見てごらん?」
 彼女が手に持ったままの携帯を取り上げ、「ほらね」と電波マークを見せてあげる。
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