光のもとでⅠ
「そういうのが許可されている部屋なんだ。悪くはないでしょ?」
 彼女は悲痛そうな顔をした。
「そんなに困ることじゃないと思うけど?」
 そんな彼女が見ていられず、
「さ、ベッドに横になって」
 と、ベッドへ誘導する。
 彼女がベッドに腰掛けたそのとき、俺の心に冷徹という仮面の装着が終わった。
「俺の母親も司たちの母親も、この部屋で出産したんだよ。帝王切開にならない限り、この部屋で産むことができる。そういう設備が整えられている。……いつか、翠葉ちゃんがこの部屋を使うことになると嬉しいね。もちろん、俺の子どもを産むために」
 自然と身体が動く。
 彼女の、血色の悪い唇に自分のそれを重ねる。
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