光のもとでⅠ
「司、もう一度言う。翠葉ちゃんの記憶から、秋斗と司の記憶だけがなくなった」
「司……悪い――」
 少し離れた場所から秋兄の声がした。
「こんなことになるとは」
 と。
 ふざけるなっっっ。
「司、秋斗は本意じゃなかったんだ」
 意味がわからない。
 静さんが口にした言葉の意味がわからない。
「秋斗は彼女を襲うつもりもなければ、彼女を許さないつもりもなかったんだ」
 何を言って――。
 秋兄は確かに昨日の電話で翠に「許さない」と言った。
 それは俺の目の前で起こったことだ。
 けれども、一瞬胸を掠めた疑問がある。
< 2,372 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop