光のもとでⅠ
 ――この秋兄が、翠に向かってそんなことを言うだろうか?
 いや、確かに言った。
 でも――。
 自分の記憶が疑わしくなってくる。
 でも、だとしたらなんで今朝みたいなことが起きるのかとか、どうして自分が部分健忘の部分に組み込まれてしまうのか、すべてに納得がいかない。
「ただ許すだけじゃダメだと思った。……そんな簡単に許すだけじゃ、彼女は自分を責めることはやめない。そう思ったんだ――」
 口を開いた秋兄からは思いも寄らない言葉が紡がれる。
「だから、その立場を利用して彼女には恋人になってもらおうと思った。少しでも俺から責められることで楽になるのなら、そんな期間を少し設ければいいと思っていた」
 そんなこと――。
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