光のもとでⅠ
 あ――。
 咄嗟に顔を上げたのは秋兄も一緒だった。
「秋斗と森林浴に行った記憶などない。つまり、彼女が撮った写真ですら、記憶の混乱を招く可能性がある」
 記憶を無くすということがどういうことなのか、俺には想像ができない。
 けれど、俺や秋兄が翠と過ごした時間はそれなりにある。
 日常生活に支障がなかったとしても、ところどころの記憶がなければ本人だって混乱するだろう。
 翠の性格からして、パニックになることは間違いない。
 どうしたら――。
 脳裏に浮かんだのはずいぶんと前に読んだ本の一文。
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