光のもとでⅠ
 ――人の記憶は都合よく改ざんされる。
 つまり、記憶をなくしても、それが"全健忘"でない限りは、都合いいように脳が前後の記憶をつなぎあわせてくれる、ということだ。
 けれど、つい最近の出来事で分量が多いとなると、それがどこまで適用されるものなのか――。
「司、おまえは今日の夕方に病院へ行って会うことができる。が、もちろん彼女はおまえのことを覚えていない」
「っ……会ってどうしろとっ!?」
「とくには何も……。自己紹介でもしたらどうだ?」
 自己紹介、ね……。
 ま、そこから始めるしかないんだろうけれど……。
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