光のもとでⅠ
 青白い顔をした翠が倒れるのも見たくなければ、秋兄がこんなになってるのだって見たくない。
 俺にとってはふたりとも大切な人間で、それはどうあっても変わらない。
 何があっても変えられないんだ。
「秋兄、弓道見てよ……」
「え?」
「今朝から一射も中らない。型が崩れてるのかもしれないから」
 そんなのは自分の精神鍛錬が足りてないからほかならない。
 でも、インハイは目前だし、翠が記憶を取り戻したとき、翠がまた自分を責める要因は作りたくない。
 なら、インハイで入賞するしかないだろっ!?
 もともとそのつもりで練習してきたんだ。
「秋兄、忘れてないよね」
 何を、という顔をされうんざりする。
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