光のもとでⅠ
「ピンチは最大の好機――」
 秋兄に向き直り、今度こそ宣言する。
「俺は翠が好きだ。秋兄も俺に譲れないくらいにはそう思ってるよね? なら、今回のことで引け目なんか感じず、これからは秋兄らしく翠に接してくれない? 少なくとも、今回みたいな――秋兄らしからぬ行動はしないでほしい」
「……司?」
「意味、理解できないわけ? 翠にごく甘なのが秋兄だろっ!? なら、そのままでいればいいんだっ。無理に突き放したり冷たくするからこんなことになるっ。翠を突き放したりきついことを言うのは俺の専売特許。秋兄の専売特許は甘いことだ。違うっ!?」
「…………」
「少しくらい何か言えよ」
「……ありがとう」
「弓道、見てくれるんだよね」
「あぁ、いいよ」
 生気のない顔に少しの笑みがうかがえた。
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